小 熊 座 句集 『枯峠』抄 佐藤 鬼房
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                絵はがき 山田美穂さん提供




       句集 『枯峠』抄 (自選句)  平成7年~9年 佐藤 鬼房


           野良に先づ礼して初日出るを待つ

           帰りなん春曙の胎内へ

           ほlら吹になりたや春の一番に

           陽炎に突込んでくる猫車

           もしかして俺は善知鳥(うとう)のなれのはて

                野澤節子逝く
           春蘭の貴種に殉ぜし志

           雑仕女のやうな牡丹を愛しむ
               
           死に至るわが道草の車前草(おおばこ)
                   
           螇蚸を捕へて見れば少彦名(スクナビコナ)

           泣きやまね蓑虫に洒注いでやる

           ずぶ濡れの少女を探す海朧

           暗愁の春過ぎて夏そして何

           死霊怨霊一皮剥けばみな優し

           松の蜜舐め光体の少年なり

            立原道造詩碑(盛岡)
           稚児ゆりのうつむき咲きに風聖(きよ)

           創生か滅びか小涌谷晩夏

           鳥寄せの口笛かすか枯峠

           地下茎をたどれば母体手鞠唄

           魂極るいのち耀ふ雪煙

           あてもなく雪形の蝶探しに行く

             衆楽園(津山)
           落花をりをリ魚ごころ水ごころ

           かげろふ童女一人消え狐面

           見ひらけぽ菩提樹の花瞑れば海

           北冥二魚有り盲ヒ死齢越ユ

           刃こぼれのやうに海へと花火散る
                         
           夕月の砂山に呼び出されたる

           今晩は今晩は枯芒原

           むささびに逢ふべく夢の漸わたる

           地に帰る雪の精こそわがをんな

           観念の死を見届けよ青氷湖





  
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